2018年4月4日水曜日

広瀬淡窓10


江戸漢詩の魅力をはじめて僕に教えてくれたのは、富士川英郎先生の『江戸後期の詩人たち』でした。もちろん広瀬淡窓も大きく取りあげられていますが、小琴の忘れがたい逸話も紹介されています。

ある時、昭陽の弟子と思われる雷首という青年が、16歳になった小琴にプロポーズの五言絶句を贈りました。この雷首とは、やがて小琴と結婚し、亀井家を継いだ三苫源吾のことにちがいありません。小琴も前から彼を憎からず思っていたのでしょう、五言絶句でこたえました。これまた戯訳で……

 日本一の梅の花
 今宵あなたのために咲く
 花のまごころ知りたけりゃ
 月影踏みつつ深夜来て

江戸時代には、女性が『女大学』によってがんじがらめになっていたと考えられてきました。それにもかかわらず、こんなみずみずしくロマンティックな詩を詠んだ閨秀詩人がいたことに、そのとき僕は大きな驚きを感じたのでした。

0 件のコメント:

コメントを投稿

鎌倉国宝館「扇影衣香」1

  鎌倉国宝館「扇影衣香 鎌倉と南宋・高麗の仏教絵画の交響」<12月14日まで>     扇影衣香――美しい四字熟語ですね。『諸橋大漢和辞典』には、「扇子のかげと衣のにおい。貴婦人などの会合を形容して云う語」とあります。しかし出典が 書かれていない ので、AIのジェミニに訊いてみ...