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2026年10月14日水曜日

出光美術館<門司>「水墨画の巨匠たち 雪舟から鉄斎まで」6

 


しかし「無用之用」という言葉自体は、『老子』じゃなく『荘子』から採られているようです。その内篇<人間世篇じんかんせいへん>に「人はみな有用の用を知ってはいるが、無用の用を知るものはない」とあるからです。つまり瓢箪は、普通であれば何の役にも立たない空間(無用)に効用(用)があることになります。


それではどうして鯰が「不至之指」になるのでしょうか? 「不至之指」は『荘子』の雑篇<天下篇>にあり、僕が愛用する森三樹三郎訳注の中公文庫版では「物をさす指は、物の本質に到達することはできない」と訳されています。鯰に指などないのですから、これだけではどうしても鯰と結びつきません。

2026年10月13日火曜日

出光美術館<門司>「水墨画の巨匠たち 雪舟から鉄斎まで」5

 


A=口+号、B=卵+心という字ですが、さすがに『諸橋大漢和辞典』には載っています。Aはうつろで大きいさま、B子は肥えた人をいうとありますから、A然は瓢箪を、B子は鯰を暗示しているようです。そうすると「無用之用」は瓢箪と、「不至之指」は鯰と関係する言葉とみなくてはなりませんが、無用之用の解釈は簡単でしょう。


瓢箪は瓢箪そのものではなく、中の空洞にこそ存在意義があります。そこに水やお酒を入れられるからです。古くはお米も入れました。これをもっともストレートに教えてくれるのは『老子』の第11章です。小川環樹先生はその部分を「粘土(埴)をこねて、容器をつくる。その何もない空間に容器の有用性がある」と訳しています。瓢箪もこれとまったく同じですね。

2026年10月12日月曜日

出光美術館<門司>「水墨画の巨匠たち 雪舟から鉄斎まで」4


  さすが大典和尚、七言絶句にみえて七言絶句にあらず、ワードじゃ出てこない変な字を使っています。当然意味はサッパリ分からず、まったくお手上げでした。ところが出光論文により、芳澤勝弘さんが正しく解読していることを知ったのです。それを参照しながら例のごとく、マイ戯訳を作ってみました。けっきょく絶句というか、四行詩みたいになっちゃいましたが……。

 何来A然 触着B子 孰知無用之用 孰知不至之指 咦 千古万古漫相倚 


    鯰を丸い瓢箪で 捕らえることはできますか?

   無用の用の真の意味 誰一人として知りません

   指が本質 指せぬこと 誰一人として知りません

    (有用の無の意味もまた 誰一人として知りません)

   両者は仲良く昔から 補完関係 保ってる

    (だから最初の質問は 自体ハナからナンセンス)


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2026年10月11日日曜日

出光美術館<門司>「水墨画の巨匠たち 雪舟から鉄斎まで」3

  

 野口さんは『美術史家、大いに笑う』(2006年)というチョッと変わったタイトルの論文集に、「《如拙道人の筆に擬す》とは、これ如何――池大雅筆『柳下童子図屏風』序説」という興味深い論文を発表したんです。『美術史家、大いに笑う』とは、これ如何? 佐藤康宏さんが編集してくれた僕の大学退職記念献呈論文集です!! 僕は夏目漱石になったような気分です(!?)

 出光佐千子さんは10年ほどまえ『出光美術館研究紀要』21号に「池大雅における室町文化憧憬の一様相」という、これまた興味深い論文を発表しました。野口さんによって端緒が開かれた大雅と室町水墨画の関係から、大雅による翻案のアイディアと方法へ研究を進めたのです。両者から僕も多くを学びましたが、ここでは大雅「瓢鯰図」の画面左上の書かれた大典和尚の賛に注目してみたいと思います。

 

2026年10月10日土曜日

出光美術館<門司>「水墨画の巨匠たち 雪舟から鉄斎まで」2

 

  「僕の一点」は池大雅の「瓢鯰図ひょうねんず」ですね。チョッと文字はちがいますが、同じ主題を取り上げてチョー有名なのが、室町時代初期の画僧如拙が描いた国宝の「瓢鮎図ひょうねんず」です。


これは丸い瓢箪でヌルヌルしたナマズを押さえることが出来るかどうかという禅の公案、つまり参禅する者に出し座禅しながら考えさせる質問みたいなものです。しかしこの公案なるものが、現在も行なわれているのかどうか知りません。この公案が一般化して「瓢箪鯰」という一つの言葉になり、つかまえどころのないものを指すようになりました。画題としてよく知られるのは大津絵の「瓢箪鯰」です。


これら瓢箪鯰の伝統を自家薬籠中のものにして、大雅はこの「瓢鯰図」を描き出したのです。その事実を具体的に教えてくれたのは、「饒舌館長ブログ」に何度も登場してもらっている根津美術館の野口剛さんでした。


 

2026年10月9日金曜日

出光美術館<門司>「水墨画の巨匠たち 雪舟から鉄斎まで」1

 

出光美術館<門司>「水墨画の巨匠たち 雪舟から鉄斎まで」<11月3日まで>

 すでに何度か紹介させてもらった出光美術館<門司>ですが、現在の建物がオープンしたのは2016年のことでした。いま開催中の「水墨画の巨匠たち 雪舟から鉄斎まで」展には、「新館開館10周年記念」というキャッチコピーが冠されています。

日本の水墨画を生み出した雪舟に象徴される室町時代から、長谷川等伯たちが活躍した桃山時代、続いて百花繚乱の江戸時代まで、水墨画の歴史が分かりやすく、しかも楽しく通観できる展覧会です。近代は富岡鉄斎という超個性的な文人画家に代表してもらっています。キューレーターの立畠敦子さんがとてもうまく仕立ててくれました。先日行なわれた内覧会では、立畠さんのギャラリートークを聞きながら堪能、翌日は河合正朝さんの講演を拝聴、河合水墨画論から多くを学んだことでした。

2026年10月8日木曜日

東京都美術館「大英博物館日本美術コレクション 百花繚乱 海を越えた江戸絵画」12

  

 花鳥之間の南側に仙人之間があって、あと4面、さらには8面にわたって仙人か唐人物が描かれていたのではないでしょうか。山下善也さんが紹介してくれた速水春暁斎「多武峰之図」の「竹林坊学頭屋敷」をみると、とても立派な建物ですから、二部屋だけだったとは考えられないからです――いよいよ妄想と暴走になってきたかな(´艸`)

ところが改めてカタログを通読したところ、シアトル美術館キューレーターをつとめるアーロン・リオさんが、すでに指摘していたんです。「琴棋書画仙人図襖」は隣接する壁面へ続いていた可能性があると……。そうなると僕の妄想と暴走じゃなくなってきます!!


しかしこんなゴチャゴチャした問題など、「饒舌館長ブログ」ファンにはどうでもいいことでしょうから、最後に先の『國華』1569号<宮越家特集号>を是非おススメしたいですね!! 特別定価になっていてお買い得ですよ!!


ヤジ「特別定価とはいいながら65ページで8800円もするそうだが、おススメする以上オマエが少しは出してくれるのか!?」

出光美術館<門司>「水墨画の巨匠たち 雪舟から鉄斎まで」12

   大典は宋儒や荻生徂徠の 解釈 を非難し、あえて新説のために新説を考え出すような態 度を否定する。 そして 『論語集 覧 』なる 注釈書について、「毎 章各々異義を演べ、力めて 新説を出す。 要は一家の説を立つるに在りて、聖言を以て己が意に随わすの弊を免れず」 と批判する。個...