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2023年10月31日火曜日

東京国立近代美術館「棟方志功展」4

 


  NHK文化センター青山教室の講座では、この2書を紹介したあと、マイベスト15のスライドを制作年代順に映しながら、棟方志功は日本独自の表現主義であるという持論を開陳したことでした。

「棟方志功展」のキャッチコピーは、「国際展受賞作から書、本の装画、商業デザイン、壁画まで――『世界のムナカタ』の全容を紹介」「青森―東京―富山、棟方の暮らした土地をたどる、初の大回顧展」――これにウソ偽りはありません。空前にして絶後の棟方志功展です。少なくとも僕にとっては疑いなく絶後でしょう。


2023年10月30日月曜日

東京国立近代美術館「棟方志功展」3

続いて紹介したのは、棟方の自叙伝ともいうべき『板極道』(中公文庫 1975年)です。棟方芸術を考えるときに読むべき、もっとも重要な1冊でしょう。いや、読み物としても上々の1冊です。すごくおもしろいんです。棟方の体内から自然に湧いてくるようなユーモアがとてもいいんです。子ども時代の赤貧と苦労を知ると、涙がこぼれてきます。もちろん棟方という芸術家に、改めてオマージュを捧げたい気持ちが高まってきます。

もっとも僕は、最後の「わたくしの極道」を読み終えたとき、「あぁ俺にはこういった人生に対する情熱と意欲が欠けていたなぁ」という、忸怩たる気持ちにもなったのでした。根が真面目なせいかな() 

 

2023年10月29日日曜日

東京国立近代美術館「棟方志功展」2

 

じつはこの10月から、月に1回NHK文化センター青山教室で、「魅惑の日本美術展 厳選ベスト6シックス!!」という展覧会を紹介する講座を開いています。チラシに「この講座を聴いてから出かければ、もうカタログなんか買う必要はありません」と書いたら、ブーイングが飛んできましたが……() 

その第1回に選んだのが、この「生誕120年 棟方志功展――メイキング・オブ・ムナカタ――」でした。最初に棟方のお孫さんである、石井頼子さんが著わした好著『もっと知りたい棟方志功 生涯と作品』(東京美術 2016年)を紹介しました。

2023年10月28日土曜日

東京国立近代美術館「棟方志功展」1

東京国立近代美術館「生誕120年 棟方志功展――メイキング・オブ・ムナカタ――」<123日まで>

 棟方志功――大好きな、そして尊敬して止まない日本の版画アーティストです。棟方の用語にしたがえば、「板画」と書くべきかもしれませんが、棟方を含めたすべての版画をイメージする場合には、やはり「版画」とせざるを得ません。

棟方志功は明治36年(1903)青森に生まれましたから、今年は生誕120周年の節目の年に当たっています。そこで棟方ファンの僕は、棟方美人をパクって今年の恒例版画年賀状にしたのでした。元旦の「饒舌館長」にアップしたように思いますが、改めて紹介させていただきましょう。ケッコウうまくできてるんじゃないかな()

 

2023年10月27日金曜日

サントリー美術館「虫めづる日本の人々」40

『画本虫撰』はきわめてソフィストケートされた寛政の改革批判でした。いや、批判といえば強すぎます。ソフィストケートされた揶揄といった方がよいでしょう。そもそも虫狂歌合せの転用だったのです。これなら絶対幕府に気づかれません。たとえ気づかれても、申し開きはたやすかったでしょう。たまたま筐底に眠っていた虫狂歌合せを思い出して、出版しただけだと……。

それは南畝という天才が放った18世紀の、あまりにもロマンティックなさとり絵(風刺画)でした。19世紀に入ってたくさん生まれた直接的なさとり絵とは、類を異にするきわめて上質なさとり絵です。

しかしそんなことを知る必要はまったくありません。そもそもこれは饒舌館長の妄想と暴走に過ぎません。ただ心をマッサラにして、喜多川歌麿というもう一人の天才が創り出した絵画世界に沈潜する――これこそ『画本虫撰』最高の鑑賞法だといってよいでしょう。


2023年10月26日木曜日

サントリー美術館「虫めづる日本の人々」39

しかし、南畝が撰者になることは憚られました。南畝が撰者になればともかくも目立ち、幕府から目をつけられやすくなります。そんな危険をあえて冒す必要など毛頭なかったでしょう。メンバーは多士済々、南畝を除く29人のなかから選べば問題ないのですから。

南畝は宿屋飯盛を撰者に仕立てて韜晦とうかいをはかりました。しかし、実際の撰者は南畝であったにちがいありません。『画本虫撰』の傑出せる出来映えがそれを証明しています。あまりにも美しい虫の絵本が、生類憐みの令という悪政とかすかな共鳴を起こします。するとそれが寛政の改革という悪政と、また微妙な共鳴を起こすんです。虫だから言うんじゃ~ありませんが、それは共鳴にすぎません。

チャートにすれば、『画本虫撰』→虫→生類憐みの令→悪政→寛政の改革となりますが、矢印を逆にたどることもできるでしょう。

 

2023年10月25日水曜日

サントリー美術館「虫めづる日本の人々」38

虫を苦しませることは僻事とされ、害虫殺傷さえ禁じられたと考えられていたのが生類憐みの令でした。生類憐みの令の象徴ともいうべき虫のイメージが、南畝の胸底に浮かび上がったとき、ほとんど同時に、かつて心を許しあう友人と楽しんだ虫狂歌合せがよみがえってきたのではないでしょうか。その記録が筐底に眠っていることを、思い出したのではないでしょうか。

さっそく南畝は、蔦屋重三郎のもとに駆けつけ、サナギから蝶に羽化するのを待っていた喜多川歌麿に白羽の矢を立てたのです。

 

東京都美術館「再興第111回 日本美術院展覧会(院展)」4

  それが奇縁となって、このたび日本美術院の外部から意見を述べつつ応援するような役目を仰せつかりました。上野精養軒で開かれたレセプションで挨拶を求められた僕は、日本美術院との関係を3つ述べてそれに代えることにしました。もちろん一つは先の前田青邨顕彰 中村奨学 会と中村賞ですが、 ...