杉本さんのデビュー作「ジオラマ」シリーズを観ていると、あまりにも有名な、近松門左衛門が演劇の理想を指摘した「虚実皮膜ひまく(ひにく)の間」という言葉が浮かんできました。ジオラマは現実を再現した視覚装置でありながら、現実の世界ではありません。科学的研究に依拠している場合でも、ほとんどが空想――虚であるといっても過言ではありません。虚実皮膜の間にある「見世物」です。
写真がカメラを用い現実を写し取った記録であることは、改めていうまでもありません。しかしそれが決して現実の忠実な再現ではなく、撮影者の意識や観念、つまり虚を反映させることも可能であることは、早くから指摘されてしました。しかも今や、写真によって完璧な虚、はやり言葉でいえばフェイクを作り出すことも容易くできるようになってしまいました。

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