2025年10月25日土曜日

出光美術館「琳派の系譜」11


 今回僕は、乾山の最高傑作陶とたたえられるべき「銹絵染付金銀白彩松波文蓋物」を一人静かに眺めながら、そこに謡曲「高砂」とのかすかな共鳴を聞いたのでした。だからといって、乾山が謡曲の「高砂」を意識して造形化したわけではないでしょう。

 かつて乾山は華やかな能を愛好する兄光琳に対して、学究肌の高踏的人間だと考えられていました。しかし乾山も能謡曲に多大なる興味を示し、その幽玄なる美から強い影響を受けていました。「光琳と乾山――山根有三先生の墓前に捧ぐ――」という拙論に指摘したとおりです。

 この拙論は畏友・佐藤康宏さんが僕の退職記念に編集献呈してくれた『美術史家、大いに笑う――河野元昭先生のための日本美術史論集――』(ブリュッケ 2006年)に寄稿したものでした。このあと「笑う美術史家」として有名(!?)になったのは、このタイトルのお陰でした( ´艸`)

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