「鳥類真写図巻」にも、この掛幅にも、三井記念美術館学芸部長の清水実さんが撮影したリアルなカケスの写真が添えられています。比べてみると、始興の写生はやや太目で、完成画の掛幅ではさらに太目になっているように感じられました。
始興の師である尾形光琳の「鳥獣写生図巻」(京都国立博物館蔵)にもカケスが登場しますが、こちらは写真と同じように細めです。あるいは始興の場合、写生の段階で絵画化へのベクトルがすでに働いていたのかもしれません。
始興の「鳥類真写図巻」については、先の清水実さんが『三井美術文化論集』11号(2018)に、詳細な「資料紹介」を寄稿しています。会場では細かい字の留書が読めませんでしたが、清水さんはそれをすべて翻刻し、片仮名を漢字に改めて詠み易くしています。
カケスの留書は「羽裏薄墨/はね裏のむくげ朱墨/朱墨隈/白」――始興の息づかいが伝わってくるようではありませんか!! 写生の重要性を主張して江戸時代絵画を革新し、多くの弟子を養育して円山派を開いた円山応挙は、このような始興の写生から決定的影響を受けたのでした。
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