2024年6月19日水曜日

太田記念美術館「国芳の団扇絵」4

 

吾妻橋の上にたたずむ二人を想像すると、永井荷風という一人の人間をいとおしく思う気持ちがいや増すのを覚えますが、もちろんこれを汚けがらわしく感じる方も、だから荷風は嫌いだという人もいらっしゃるでしょう。

この荷風に名著『江戸芸術論』があります。そのなかに「衰頽期すいたいきの浮世絵」という評論が収められています。荷風は「国芳に於ては時として西洋画家の製作に接する如き写生の気味人に迫るものあるを見る。国芳の写生の手腕は葛飾北斎と並んで決して遜色あるものにあらず」と、いま「饒舌館長ブログ」にアップ中の歌川国芳をたたえています。しかし総体としては、この時代の浮世絵をあまり評価していないのです。

時世は最早もはや文政天保以後の浮世絵師をして安永天明時代の如く悠然として製作に従事する事を許さヾるに至れり。錦絵は歌麿以後江戸随一の名産と呼ばれ美術の境を出でゝ全く工芸品に属し、絵本は簡単なる印刷出版物となりぬ。浮世絵は社会の需用あまりに多くして遂に粗雑なる商品たるの止むなきに至りしなり。五渡亭国貞一勇斎国芳以下の豊国門人、また菊川英山、……は不幸なる此の時代を代表すべき画工たり。

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