もっとも、揚補之が松竹梅を一緒に描いた最初の画家ではないようです。愛用する金井紫雲の『東洋画題綜覧』によると、すでに唐の有名な書家・李邕りようが、松竹梅図に6言詩を着賛しているんです。これもマイ戯訳で……。
雪見 楽しみ酒を酌む 寒さ身にしむ独り部屋
氷を割って湯をわかし 茶を煮りゃ部屋も温まる
チョット酔ったらいい気分 子供を呼んで画をひろげ
心ゆったりにこやかに 「松竹梅花」と題を書く
もちろん、中世に入れば山上憶良の歌は忘れ去られ、画家や鑑賞者に意識されることなく、記憶の残滓が脳内のどこかに沈殿しているに過ぎなくなっていたことでしょう。 しかし、憶良の歌のDNAだけは伝えられていたように思われてなりません。例えば 俵屋宗達の傑作「松島図屏風」(フリーア美術館蔵...
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