この特別展を発展させて編集刊行された本書は、「鑑賞編」と「論考編」からなっています。前者は松竹梅をライトモチーフにした絵画工芸作品をカラー図版で紹介し、それぞれに解説を添えています。解説は簡にして要を得ており、しかも研究の成果がよく反映されていて、饒舌館長の独断と偏見とはわけが違います(笑)
後者は8人の研究者が松竹梅にまつわるテーマを設けて、それぞれ専門的な立場から論述を進めています。これまたすべて研究の成果ですが、脚注のついた論文と、もう少しやさしく書かれたコラムとに分かれています。
江戸時代中期に活躍した肉筆浮世絵師・宮川長春の筆になる絶品です。長春は尾張宮川村に生まれ、これを姓にしたと伝えられています。いつのころか長春は江戸に出て、菱川派や懐月堂派、さらに伝統的な土佐派をも学んで、もっぱら肉筆に創造の場を特化しました。やがて豊麗なる肉筆美人画様式をもっ...
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