大中臣能宣おおなかとみのよしのぶ
をみ(小忌)にあたりて侍りける人のもとにまかりてはべりけるに、女さかつきにひかげをいれていだし侍りければ
有明のこゝちこそすれ酒盃さかつきにひかげもそひていでぬと思へば
*ある神事に奉仕する人のもとへ出かけると、お付きの女性が盃に日陰蔓ひかげのかずらを浮かべたお酒を出してくれたので、まるで月がありながら夜が明けてくる有明けのような心地がしました――といったところでしょうか。つまり能宣が訪ねたのは、月夜だったのでしょう。日陰蔓は羊歯しだの一種で、もともと神事に際し、物忌みのしるしとして冠の笄こうがいに飾ったそうです。もちろんこれは音を通じ合わせたものであって、漢字でかけば「日陰蔓」に対して、「日影も添いて……」となるでしょう。この女性がこれをお酒に浮かべて出してくれたのも、物忌みという隠喩であって、単に見た目をよくしようとしたわけではなく、ましてやお酒を美味しくしようとしたわけじゃ~ないようです(笑)
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