2022年10月9日日曜日

久米美術館「久米桂一郎日本絵画コレクション展」6

 この七言絶句は、瀧和亭がみずから詠んだものではありません。明時代の書家にして詩人であった申時行しんじこうという士大夫の詩で、『御定佩文斎群芳譜』に載っているのを、和亭がパクッたんです。今やネット検索をかけると、簡単にばれちゃうんです() いや、この詩も師・椿椿山の「旧本」に着賛されていたにちがいありません。

改めて画面をよく見ると、白菊のなかに淡い黄色の菊が花を開かせています。菊を描こうと思い立った椿山は、『御定佩文斎群芳譜』で申時行の七言絶句を知って――あるいはすでに知っていたのかもしれませんが、それからインスピレーションを得てこの作品に取り掛かったのでしょう。

 

0 件のコメント:

コメントを投稿

出光美術館(門司)「琳派の系譜」7

愛用する『能・狂言事典』(平凡社 1987年)から、「高砂」の「鑑賞」を引用することにしましょう。 編者のお一人である羽田昶さんは、能謡曲にまったく無知であった僕を親切に教導してくださった恩人です。 「光琳と能」「宗達と能」といった拙論をまとめることができたのも、ひとえに羽田さん...