2021年12月20日月曜日

根津美術館「鈴木其一・夏秋渓流図屛風」6

そもそも其一は応挙に強い関心を向けていたらしく、かつて『國華』に紹介した応挙の大津絵風「美人図」には、其一の極め書きが付いていました。応挙の「寿老・大黒・恵比寿図」三幅対に倣った其一作品も、この特別展に出陳されています。

様式問題は野口さんが3つのレイヤーによって解決してくれていますが、それではなぜこんなすごい屏風が制作されることになったのでしょうか? 其一が文人画家のようにみずからの楽しみのために、あるいは自己表現として描いたはずはありません。そこに其一の個性や独自の美意識が表現されていることは紛れもない事実ですが、特別な制作目的や、制作費を出してくれたパトロンがいたにちがいありません。

 六曲一双の金地本間屏風であることや上質な絵具の発色、そして何より其一の全身全霊を捧げた打ち込みぶりを考えると、並みの屏風じゃ~ないように疑われるのです。 

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