2021年9月10日金曜日

火酒15

 

性酒を嗜む。かつて摂津池田に至り、酒肆の前を過ぐるに忍びず、入りて4斗入りの火酒1樽を購い、連飲すること1升、後を顧みずして去る。主人その常人にあらざるを察し、人をして追尾せしむ。楊谷徐[ゆる]やかに行き、郊外に佇立し、暮景を恋賞す。よって意を致して伴い帰る。主人その楊谷なるを知り、歓待すこぶる到る。楊谷ために屏風1双を画き去る。

またかつて江戸に在り、猩々会に望み、豪飲第一位を占む。将軍家房その画を愛し、かつ酒量の大なるを聞き、引見酒を賜う。楊谷飲み尽くせる酒量1斗、挙止整然、少しも酔態なかりしという。

0 件のコメント:

コメントを投稿

出光美術館(門司)「琳派の系譜」8

この二つの松は、『万葉集』『古今和歌集』の二集にたとえられ、松の葉の栄えは和歌の言の葉の栄えを意味し、つまりは天下泰平の象徴だというのである。 老人はなお松の徳をさまざまに物語り( クセ )、自分たちこそその松の精だと名を明かし、先に住吉へ行って待っていると言い残して小舟で 沖 ...