2021年6月13日日曜日

静嘉堂文庫美術館「旅立ちの美術」5

旅立ちと酒は切っても切れない関係に結ばれていました。酒を飲んで盛り上がるだけじゃ~なく、必ず再会しようという約束固めの気持ちが込められていました。再会がかないそうにないとき、酒の代わりに水を互いに注ぎあって飲むのが本来の「水盃」[みずさかずき]です。酒を飲まずに別れるなんて、愚の骨頂というより、不吉なことだったのでしょう。

 それは晩唐の詩人・于武陵の「勧酒」を持ち出すまでもありません。かの井伏鱒二の名訳で有名な五言絶句です。日本美術史と関係の深い漢詩から探せば、何といっても盛唐・王維の「元二の安西に使いするを送る」でしょう。池大雅がふるさとの越後へ帰る五十嵐俊明へ贈った「渭城柳色図」のイメージ・ソースとなった七言絶句です。これらと肩を並べる和歌もあるはずですが、チョット思いつきませんね。 

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