2020年7月12日日曜日

七夕6



一方、わが国では――少なくとも『万葉集』の時代には、彦星が織姫に会いに行くものと相場が決まっていたようです。『万葉集』の歌でよく知られるのは、巻8に載る「山上臣憶良の七夕の歌十二首」でしょう。その浪漫性あふれる第1首は……
 天の川相向き立ちてわが恋ひし君来ますなり紐[ひも]解き設[]けな
中西さんは、「天の川に向かいて立ち、恋しく思っていたあなたがいらっしゃるようだ。紐を解いて待とう」と現代語訳をつけていますが、もちろんこれは織姫の立場から詠まれていますよね。このほかにも、「牽牛[ひこぼし]の嬬[つま]迎へ船漕ぎ出[]らし天の川原に霧の立てるは」をはじめ、彦星の方が出掛けることを示す歌がいくつか見出されます。

0 件のコメント:

コメントを投稿

ブータン博士花見会4

  とくによく知られているのは「太白」里帰りの物語です。日本では絶滅していた幻のサクラ「太白」の穂木 ほぎ ――接木するための小枝を、イングラムは失敗を何度も重ねながら、ついにわが国へ送り届けてくれたのです。 しかし戦後、ふたたび「染井吉野植栽バブル」が起こりました。全国の自...