2020年6月19日金曜日

梅雨4



人間がその気を受けると病気になり、物がその気を受けると黴[かび]を生じる。したがってこの雨水を使って酒や酢を造ってはならないが、それを吸い込んだ大地が夏の酷暑を和らげてくれるのである。すなわち、梅雨を6月の中気(24節気を一つおきにとった分点)――つまり大暑のころとする陳氏の説は間違っている。
李時珍がクレームをつけている「陳氏」とは、『本草綱目』の「歴代諸家本草」に挙げられている『本草別説』の著者・陳承のことでしょう。上野益三先生の『日本博物学史』によると、1092年の条に「宋、元祐7年。四川の人陳承の『重広神農本草並図経』23巻成る。『嘉祐補注本草』と『本草図経』とを併せて一本とし、見る者の便を図ったもの」とあります。両者が同じ本草書を指すことはまず確実でしょう。それはともかく、李時珍先生は天上で、「オマエの和訳も陳承と同じでまったく間違っている」と怒っているかな()


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