2019年12月11日水曜日

中国美術学院「歴史と絵画」12


1884年から1893年まで10年間、フランスに留学していた黒田はアメリカを経由して帰国、翌1894年、盟友・久米桂一郎と力を合せて画塾・天真道場を開設した。その天真道場の規定は、次のような二条をもって始まる。

  一、当道場に於て絵画を学ぶものは天真を主とす可き事

  一、稽古は塑像臨写活人臨写に限る事

 これまで第二条ばかりが注目されてきたが、まず考察すべきは、当然第一条でなければならない。

天真とは何か。試みに諸橋轍次の『大漢和辞典』を引いてみると、天から与えられた純粋の性、人の本性とあり、杜甫が李白に寄せた詩が引かれ、よく知られる「天真爛漫」という熟語もあげられている。これこそが天真道場の根本精神だったのだが、東洋の文人画ときわめて近い精神が感じられる。

0 件のコメント:

コメントを投稿

渡辺浩『日本思想史と現在』10

  『近世日本社会と宋学』は研究書ですから、やや手ごわい感じを免れません。それはチョッと……と躊躇する向きには、『日本政治思想史 十七~十九世紀』(東京大学出版会  2010 年)の方をおススメしましょう。 渡辺浩さんがあとがきに、「本書は、この主題に関心はあるがその専門の研...