またこの詩は、渡辺崋山も愛して止まなかったらしく、情趣掬すべき扇面画と書の12組1セットとして遺しています。この連作が幕末期に大変流行したという、文学史的背景もあったようです。
この崋山の名品については、10数年前になりますが、『國華』1323号に小林忠さんが紹介していますので、是非ご参照いただきたいと思います。もちろん崋山は、「蝴蝶双々」と「梅子金黄」を抜かりなく取り上げていますが、とくに前者は出来映えがすぐれており、『國華』でもカラー図版に選ばれています。
梅の実熟れて黄金色[こがねいろ] 大きくなったアンズの実
雪の白さの麦の花 菜の花ちょっと残ってる
夏の日長く籬[まがき]のへん 通る人影絶えてなく
ただ蜻蛉[せいれい]とアゲハチョウ 飛んでいるのが見えるだけ
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