2019年1月22日火曜日

山種美術館「皇室ゆかりの美術」5


これとは別に、同じく青邨の彩管になる「獅子図」も、静嘉堂文庫美術館には伝えられています。これは献上屏風制作の翌年、小弥太の依頼により、その鳥居坂本邸玄関広間の衝立として描かれた作品ですが、現在は保存のため額装に改められています。

衝立という間仕切りの性格上、表に雌雄の親獅子、裏に仔獅子を集めて構図を変えており、それは献上屏風とは異なった画趣を生み出す結果にもなっていますが、献上の名誉と想い出を残さずにはいられなかった小弥太の希望にしたがったことは疑いありません。

なお、すでに指摘されるように、献上屏風の仔獅子は小弥太が所蔵していた唐俑「三彩獅子」をモデルにしたものですが、ここにも青邨と小弥太の強いきずながうかがわれます。事実、小弥太は青邨から絵の手ほどきを受け、それを生涯の楽しみにしたのでした。

0 件のコメント:

コメントを投稿

渡辺浩『日本思想史と現在』12

  そのとき『君たちはどう生きるか』の対抗馬 (!?) として挙げたのは、色川武大の『うらおもて人生録』(新潮文庫)でした。京都美術工芸大学にいたとき、『京都新聞』から求められて、就職試験に臨む受験生にエールを送るべくエッセーを寄稿したのですが、本書から「九勝六敗を狙え」を引用し...