十二月七日 よく晴れて今日も暖なり。晡下(午後4時過ぎ)大石病院に徃き、日常の消化剤を求め、再び街路に出ずるに、短き日は早くも暮れ果て、十日過の月空に浮びたり。土州橋を渡り、箱崎町に立並びたる倉庫の間のさびしき道を歩み、高尾稲荷の祠前に出ず。いと狭き境内に、何やら青き色したる自然石の碑あり。あたり暗くして碑文は読み難し。御手洗の柱に木札を打付け「高尾櫛は大阪屋酒店にて一枚金弐拾銭にて御配布致します」とかきたり。石の鳥居前の小径は、直に新堀の河岸通なる豊海橋のほとりに通ずるなり。豊海橋鉄骨の間より、斜に永代橋と佐賀町辺の燈火を見渡す景色、今宵は明月の光を得て、白昼に見るよりも稍画趣あり。
2019年1月17日木曜日
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山種美術館「桜さくらSAKURA2025」5
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