2019年1月17日木曜日

サントリー美術館「扇の国、日本」2


 中国には、ここにある「団扇」のほか、長い柄のついた「翳」[さしば]なども早くよりありましたから、これらがヒントになった可能性は否定できません。しかし扇の完成された美しいフォルムを見ると、「ごあいさつ」にあるように、オリジナルつまり日本独自の発明品だと誇りたい気持ちになります。李御寧さんが指摘するように、それは<縮み>志向かもしれませんが、同時に末広がりでもあるんです。

 「僕の一点」は、南北朝時代の「萩薄扇面双雀文鏡」(大阪美術博物館<田万コレクション>蔵)です。ちょっと萩や薄には見えないのですが、題箋にしたがって萩と薄にしておきましょう。

僕が興味深く感じたのは、そこにデザインされた扇面と萩です。扇面の上に折枝花[せっしか]風に萩が描かれているのですが、萩は本当の萩であるとともに、扇面の模様ともなっています。折枝花というのは、全株の花卉に対して、折り取られた枝と花を描く中国画の画題です。



0 件のコメント:

コメントを投稿

ブータン博士花見会4

  とくによく知られているのは「太白」里帰りの物語です。日本では絶滅していた幻のサクラ「太白」の穂木 ほぎ ――接木するための小枝を、イングラムは失敗を何度も重ねながら、ついにわが国へ送り届けてくれたのです。 しかし戦後、ふたたび「染井吉野植栽バブル」が起こりました。全国の自...