高橋明也編『風俗画 日常へのまなざし』(ART GALLERY テーマで見る世界の名画7)集英社
集英社創業90周年企画として、テーマ別美術全集全10巻が出版されていますが、本書はそのなかの1冊です。編集は三菱一号館美術館館長にして畏友の高橋明也さん、かつてその『美術館の舞台裏』という快著を紹介したことがありますね。今回の『風俗画』では、「社会のなかの虚実」「家庭と日常生活」「情熱とエロティシズム」の3章に分け、67点の著名な優品や興味深い作品を紹介しています。
それは風俗画の基本的な3つのコンセプトであると同時に、風俗画の展開ともなっていて、ページを繰っていくと、西洋風俗画の全体像が自然に浮かび上がるような構成になっています。
高橋さんは総論として「風俗画の系譜」を担当執筆、ギリシア・ローマからジャンルとしての終焉を迎える20世紀までを、とても分かりやすくまとめています。わずか9ページですが、その内容は実に濃厚、厳しくチェックされているカラー図版とあわせて楽しんでほしいオススメの1冊ですよ!!
わが静嘉堂文庫美術館でこのあいだ好評裡に終了した「歌川国貞展」に際し、僕は「桃山風俗画私論」という「饒舌館長」トークをやったのですが、もし本書を知っていたら、日欧比較美術史の視点を取り入れつつ、もうちょっとおもしろい内容に高めることができたかも!?(笑)
0 件のコメント:
コメントを投稿