テート本「接吻」はロダンの指導のもと、彫刻家リゴーが大部分を作ったものと考える説もあるようです。しかし同時代の証言があるように、最後に仕上げたのはロダン自身ですから、やはり堂々たるロダンのオリジナル作品です。
美術史的にいえば、初発性はロダン美術館本に、さらにはブロンズ本の方にあるわけですが、テート本も出来映えきわめてすぐれ、ロダン美術館本と甲乙をつけることは不可能です。モニュメンタリティーの点では、むしろテート本の方がすぐれているでしょう。ロダン代表作の一つに数えられるゆえんです。
完成後の1913年、この「接吻」は英国サセックス州ルイス市の市庁舎に貸し出されましたが、一般に展示されると、その刺激的な表現に対し、ものすごい批判が湧き起りました。その結果、柵で囲われたうえシートで覆われることになり、2年後にはウォーレンのもとに戻ってきてしまいました。
彼が没したあと、競売にかかったものの買い手はあらわれず、1953年に至ってようやくテート美術館の所蔵に帰するところとなったそうです。以上はおもに、この特別展のために制作された立派なカタログによるところです。
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