2018年4月29日日曜日

横浜美術館「ヌード」13


このようにして、為政者と庶民の春画に対する意識のベクトルが共鳴するようになったときに、ヌードが公開され、裸体画問題が惹起したのです。いや、その共鳴はもう少し早く起っていたようです。

北澤憲昭さんは、この問題をノモスとピュシスという観点から論じて、刺激的論文「美術における政治表現と性表現の限界」(『講座 日本美術史』6)を発表しました。そして裸婦像への禁圧が、国家権力の一方的な規制ではなかったことを、『朝野新聞』18891117日の記事を引きながら指摘したのです。

ところで「朝妝」も、「西洋婦人像」も日本人の画家が描いたヌードでした。対象が西洋の女性であったとしても、画家は紛れもない日本人でした。もしこれが西欧の画家であったら、これほど裸体画問題は大きくならなかったでしょう。少なくとも、為政者と庶民における価値観の共鳴はこれほど強くならなかったのではないかと思います。

0 件のコメント:

コメントを投稿

追悼 高階秀爾先生16

   総合司会の大高保二郎さんがみごとに〆れば、 2024 鹿島美術財団東京美術講演会もほぼ定刻に終了、会場を地下ホールに移して、コロナ明け初のレセプションとは相なりました。僕たちは高階秀爾先生の一日も早き快復を祈念しつつ歓談、杯を重ねましたが、 9 日後に幽明界を異にされるとは...