2017年11月9日木曜日

五島美術館「光彩の巧み」2


同様の装飾効果は、溶かした釉薬で文様を満たす技法の発見によってより自由な形で可能となり、西アジアやヨーロッパでは多彩な作品が生み出されました。やがて中国、朝鮮半島を経て日本へもたらされると、この技法はやはり極楽浄土の宝にちなんで「七宝」と呼ばれるようになりました。
西から東へ大陸をめぐり、日本に花開いた七宝かざりの旅路は、人々が求めた耀きと巧みの技で彩られています。

 ところで僕は、我が国のもっとも総合的な工芸美術として、甲冑を考えてきました。甲冑には、金工、漆工、染織工、木工、竹工と多くの工芸技術が総合的に使用されているからです。こんな美術品はほかにありません。しかし、陶磁だけは絶対用いられないものと思い込んでいました。すぐ割れてしまう陶磁は、武具である甲冑に不向きだからです。

つまり陶磁を欠いているというこの点が、甲冑こそ日本の総合工芸であるという持論の欠陥のように感じられて、どっかに陶磁を使った甲冑がないものかと、ないものねだりみたいな気持ちになる時もありました。

0 件のコメント:

コメントを投稿

渡辺浩『日本思想史と現在』7

しかし渡辺浩さんは、先行研究が指摘した二つの点について、高橋博巳さんの見解が示されていないことが、やや残念だとしています。その先行研究というのは、大森映子さんの『お家相続 大名家の苦闘』(角川選書)と島尾新さんの『水墨画入門』(岩波新書)です。 僕も読んだ『お家相続 大名家の苦闘...