2017年10月24日火曜日

サントリー美術館「狩野元信」2


 篤いキリスト教信仰者であった内村鑑三さえ、独創性と独立心を愛して止まなかった日蓮――その日蓮が編み出した法華宗、今の呼び方で言えば日蓮宗は、偶像や聖像に対して冷淡であった。日蓮は礼拝すべき最も重要な対象として、「南無妙法蓮華経」という七文字を中心とする文字曼荼羅本尊と、それのみの題目本尊を創出したのである。

文永8年(1271)から弘安5年(1282)にわたって書かれた120余幅が伝えられているそうだが、それらを代表する神奈川・妙本寺本を見てみよう。単に個性的な文字などというものではない。ほとばしり出る日蓮の宗教的情熱と高揚が、横3尺を超える大幅を突き破ろうとする。

日蓮は辛苦惨憺の末にみずから確立した法華経世界を表現し、礼拝の対象とするために、画像ではなく、文字だけの本尊を選択したのである。もちろんそれは眼に心地よいポリクロームではなく、凛としたモノクロームの本尊であった。しかも本尊として一般的な三次元の彫像ではなく、二次元の掛幅であった。日蓮が独自に感得した法華経のシャングリラは、文字曼荼羅や題目本尊によって最も的確に視覚化されたのである。

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