2017年4月1日土曜日

サントリー美術館「絵巻マニア列伝」2


これが掛け幅や色紙ですと、画面の完結性が強いので、話がそこだけで終わってしまうことになります。それなら屏風や襖絵なら、横へも広がっていくから問題ないじゃないかという反論が出るかもしれません。

しかし、日本美術――というよりも、日本絵画の鑑賞法という観点から考えたとき、絵巻物は屏風や襖絵には求めることがむずかしいすぐれた美質を有していることに気づかされます。

なぜなら、日本における美術の鑑賞法は、見る人が自分の生活感情に引き寄せて味わう傾向が強かったからです。美学用語を使えば、感情移入ということになります。そのような鑑賞に、絵巻物はとてもよくフィットする画面形式でした。

気心の知れた少人数の仲間や友達で、560センチずつ巻き拡げながら見ていく絵巻物は、感情移入をやさしく迎え入れてくれる画面形式でした。

 

0 件のコメント:

コメントを投稿

渡辺浩『日本思想史と現在』8

  渡辺浩さんの『日本思想史と現在』というタイトルはチョッと取つきにくいかもしれませんが、読み始めればそんなことはありません。先にあげた「国号考」の目から鱗、「 John Mountpaddy 先生はどこに」のユーモア、丸山真男先生のギョッとするような言葉「学問は野暮なものです」...