この茶壷を所有したにちがいない高位貴顕も、使ったり眺めたりした上層町衆も、ひとしなみに「垓下がいかの歌」や「項羽」を思い出したことでしょう。いや、絵付けは虞美人草なのですから、まず初めには虞美人が胸底に浮かんだにちがいありません。
この仁清作「色絵芥子文茶壷」の絵付けは単に華麗優美なだけでなく、楚々とした美感にあふれ、得もいわれぬ哀調をおび、チョッと風が吹けばすぐに揺れ動きそうな可憐な情趣をたたえていいます。今回僕がはじめて気づかされた「色絵芥子文茶壷」の美と妙です。
それはオマエの印象にすぎないと言われれば返す言葉もないのですが、あえて淵源を探っていくと、項羽と虞美人の歴史的物語があり、「垓下がいかの歌」があり、姜夔きょうきのような漢詩もあったような気がしてきたのです。

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