さらにそのベストテンから選ぶ「僕の一点」は、「詩哥写真鏡」ですね。天保のはじめ、つまり為一いいつ時代の北斎が、版元・森屋治兵衛から出した10図の傑作揃い物です。「北斎でひもとく! 浮世絵版画大百科」展では、長大判ながおおばんの代表的作例として「少年行」が出品されていました。いま僕は「傑作」と書きましたが、以前は評判が悪かったようです。
たとえば吉田映二先生は、『浮世絵事典』につぎのごとくお書きになったいます。一応終りにチョット持ち上げていらっしゃいますが、吉田先生、こういうのを「酷評」と言うんじゃありませんか?
一種の歴史画とも称すべきものであるから、面白味はきわめて薄い。それに晩年作の通弊である形骸のみで情感の乏しさから、絵は絵のみで終わっていて、それぞれの絵に醸さるべき雰囲気も景趣も浮かんではいない。ただ色彩に見るべきものがあり、その点ではすぐれている作といえる。

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