僕は「そもそも『根来塗』自体が、近代に入ってできた言葉のようだが」と書きましたが、これは黒川真頼の『工芸志料』(1878年)に初めて登場するとされていたからでした。ところが江戸時代「根来塗」という言葉がすでに使われていたことを、この特別展「NEGORO」が明らかにしてくれたのです。というのは『紀伊国名所図会』に異本が見つかったからで、その3編1之巻「根来椀」の項には、つぎのように書かれているんです。
抑そもそも根来塗は、覚鑁かくばん上人開基以来、此この辺あたりにて製し初そめしにや。京人塗師ぬし長寛が記しるせるものを見るに、根来塗の古きかぎりは、長寛二年施主古河丸こがまるとかきつけある朱塗の机を第一とす。

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