さて、出光美術館の浮世絵コレクションは、近年になって形成されたものではなく、初代館長であった出光佐三店主時代の収集品である。そしてその特色の第一としては、まず広い意味での浮世絵のうち、一般に知悉される版画や版本類が基本的に含まれず、 肉筆浮世絵のみを専門としていることがあげられる。……ついで、出光の肉筆浮世絵コレクションの第二の特色は、先にあげた比較的コンパクトな収蔵品量にもかかわらず、各時代の代 表的な肉筆画の作品がほぼカヴァーされている、ということであろう。その内容は本巻をご覧になるのが一番であるが、まず寛文美人図から菱川派といった浮世絵の前史と揺籃期を皮切りに、十七・十八・十九世紀の各時代に驥足を展ばした絵師たちの作品が、 幕末期の葛飾派・歌川派絵師に至るまでほぼ網羅されている。しかも、それらの作品はひとりの絵師につき一、二件ないしは数件ずつという、非常に合理的な方法で集められているのに気が付くはずである。
2025年4月27日日曜日
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