2025年4月20日日曜日

クリス&クルス『芸術家伝説』7

 

とくに忘れられないのは、2013年夏、サントリー美術館で開催された特別展「生誕250周年 谷文晁」に際し、カタログ巻頭に載せてもらった「谷文晁――この絵師、何者!? 人気者――」というエッセーです。「この絵師、何者?」というのが本展のキャッチコピーだったので、それに悪乗りしたタイトルでした() 

文晁の家から一軒おいた隣に、中島一鳳という画家が住んでいました。文晁の家が豪勢に暮らしているのに対し、一鳳は画名の上がらない貧乏絵描きでした。いつも文晁をうらやましく思っていた一鳳の奥さんは、あるとき自分の夫と文晁を比べながら愚痴をこぼしました。

癪にさわった一鳳は、さんざん文晁をけなした上、「人間は死んだあとが大切だ。俺の絵などは死後にますます高くなる」と言い放ちました。すると奥さんはちょっと考えてから、「では、あなたはいつお亡くなりになりますの」と訊いたというのです。


0 件のコメント:

コメントを投稿

鎌倉国宝館「扇影衣香」4

          目出度い雪が彼方まで 驚くほどに降り積もり     目出度い雲が天上の 果てまで暗く してる けど     地上はまるで満月の 夜かと疑う明るさで     山には白雲 棚引いて きらめく朝日を 浴び てる よう     舞うがごとくに降る雪は ひらひら 散って...