2021年2月8日月曜日

小川敦生『美術の経済』7

『広辞苑』に「自己満足」を引くと、「自分自身または自分の行為にみずから満足すること」とあります。まさにこれだと思いますが、絵画芸術である「無題」の所有については、もう少しソフィストケートして、「自己陶酔」といった方がよいかもしれません。自分自身または自分の行為にみずから陶酔するのです。

しかしそのとき、もし相手がいれば陶酔はさらに心地よいものになるのではないでしょうか。その相手とは、みずからが属する超富裕層のごく親しい友人や知人にちがいありません。ごく限られた人数の小さなディナーパーティーを開いて、そっとお披露目をする――そのとき新しく所有者となった人は、誇らしい気持ちになり、得もいわれぬ陶酔感に浸ることになります。

 

0 件のコメント:

コメントを投稿

ブータン博士花見会4

  とくによく知られているのは「太白」里帰りの物語です。日本では絶滅していた幻のサクラ「太白」の穂木 ほぎ ――接木するための小枝を、イングラムは失敗を何度も重ねながら、ついにわが国へ送り届けてくれたのです。 しかし戦後、ふたたび「染井吉野植栽バブル」が起こりました。全国の自...