2020年7月5日日曜日

出光佐千子氏インタビュー2


とくに僕にとって、プライス・コレクションを飾る円山応挙筆「懸崖飛泉図屏風」を、はじめて『國華』に紹介したことは忘れることができない思い出です。この傑作が出光美術館に収まることになったわけですから、こんなうれしいことはありません。
出光コレクションの基礎を創った出光佐三店主は、素人が余技で描いたようなおっとりとした絵を好まれ、応挙のような技巧のすぐったものには、あまり関心を向けなかったそうです。事実、出光佐三コレクションに応挙作品は1点もないとのことです。
ところがこのたび、伊藤若冲の傑作ほか、応挙やその弟子たちの作品、そして江戸琳派の系統を補う優品が加わることになったわけです。出光さんは「出光美術館のコレクションですっぽり抜け落ちていた部分が補われて、厚みが増すことになりました。うれしい限りです」とおっしゃっていますが、まさにその通りだと思います。

0 件のコメント:

コメントを投稿

すみだ北斎美術館「北斎をめぐる美人画の系譜」7

   狂歌絵本『花の兄』に描かれる美人は、先に述べた宗理型と呼ばれるスラリとした美人のスタイルです。この北斎宗理型美人は、当時すごい人気を集めていたのです。それを証明するのが、「ごあいさつ」にも取り上げられていた洒落本『大通契語<だいとうけいご>』です。カタログでは、『花の兄』の...