2020年1月5日日曜日

服部南郭の春の詩5


 

 服部南郭の詩といえば、何といっても七言絶句「夜 墨水を下る」ですが、これについては山本和義さんの解説がおもしろいので、戯訳のあとにそのまま引用しておくことにしましょう。

 金龍山下 隅田川 川面[かわも]に月影浮かんでる
 川面揺れれば月くずれ 流れるさまは金の龍
 清水のごとく空は澄み 小さな舟も流れゆく
 下総・武蔵の国境[くにざかい] 秋風吹くなか下ってく

南郭の詩のうち最もよく知られたものの一つ。『江戸名所図会』七の大川橋(吾妻橋)の挿絵の賛にも用いられている。南郭をあまり高く評価しなかった頼山陽は、「論詩絶句」その九に「口角宮商 音響浮なり、句中の義味未だ深くは求めず、一生解せず 子遷(南郭)の好きを、両岸の秋風 二州を下る」と、この詩の結句を取り入れつつ批判している(『頼山陽詩集』十九)。

0 件のコメント:

コメントを投稿

渡辺浩『日本思想史と現在』12

  そのとき『君たちはどう生きるか』の対抗馬 (!?) として挙げたのは、色川武大の『うらおもて人生録』(新潮文庫)でした。京都美術工芸大学にいたとき、『京都新聞』から求められて、就職試験に臨む受験生にエールを送るべくエッセーを寄稿したのですが、本書から「九勝六敗を狙え」を引用し...