2019年5月4日土曜日

山種美術館「花*Flower*華」4

   ひどく冷たい西風が 漁師の家に吹きつける
  風花ヒラヒラ舞ってきて 融けないままで水際に……
  ぼっちの夕日がよくマッチ 待っていたのか沈まずに
  馴染みの画題を思い出す――芦の穂綿と昇る月    (「飛雪白鷺図」)

 もっとも、この両詩は綾瀬がみずから詠んだ詩じゃーありません。「菊小禽図」の賛は、『御定歴代題画詩類』巻89<花卉類>に載る明・劉泰の「題黄菊」、「飛雪白鷺図」の方は、相国寺の春渓洪曹が編んだ『錦嚢風月』に採られる張志龍の「鷺」です。ちなみに、「錦嚢」は僕が大好きな中唐の詩人・李賀のエピソードに由来するそうです。それはともかく、綾瀬はこのようなアンソロジーを持っていたことが分かります。

しかしすごい時代になったもんです。こんなマイナーな文人の詩が、ネット検索で簡単に出てくるとは!! 漢詩のことなんかよく知らない僕でも、ネット検索のことさえ黙っていれば、ちょっとは漢詩通みたいなカッコウをすることができる時代になったんです(笑)

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