最後の「石城」に「庚子夏仲 胡玉昆画 計十二冊」という款記があり、小さな印章が2顆捺してあります。この庚子は我が万治3年、西暦1660年にあたります。
キャプションによると、胡玉昆は、親友の周亮工が北京で誤認逮捕されたとき、会うために訪ねて行きました。胡玉昆は帰ってから、その親友を元気づけるため、二人の故郷である金陵、つまり今の南京の風景を描き贈りましたが、それがこの「金陵勝景図」だそうです。ちなみに胡玉昆も周亮工も明末清初に活躍した文人、『新潮世界美術辞典』にも簡単な履歴が載っています。
真景図としてのおもしろさはもちろんですが、この金蘭の友のためにこそ描くという、文人画のもっとも重要なスピリットに触れたような気がしたのです。
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