2018年4月17日火曜日

東京国立博物館「名作誕生」日本美術鑑賞への誘い3


しかし、美術愛好家や美術ファンにこれを勧めると、皆さんちょっとむずかしいとおっしゃいます。そんなとき僕が勧めるのは、恩師山根有三先生の鑑賞法です。それは「作品を見るときはそれまで学んだことをすべて忘れ、心をまっさらにして対峙せよ」という教えです。今でも基本的に僕はこの教えにしたがっています。

ところがこの鑑賞法も、皆さん「言うに易く行なうに難し」と顔を曇らせます。どうしてもキャプションや解説、すでに知っていることに引っ張られてしまうというのです。そこで僕が持ち出すのは、感情移入という方法です。今日はこの点でも小林さんと一致したので、帰ってからの晩酌が一段とおいしいことでした() 

感情移入はフィッシャーとかリップスとかフォルケファイトとかいうドイツ系美学者が唱えた方法で、したがってアインフュールングなどというドイツ語がよく使われます。これは作品を対象として、あるいは客体として見るのではなく、みずから作品のなかに入り込んでしまうというやり方です。たとえば先の若冲筆「白鶴図」なら、自分が画中の鶴になって、この波濤のうえを飛んだらきっと気持ちがいいだろうなぁと、想像の翼を広げてみるんです。


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