「僕の一点」は、泉鏡花の小説『続風流線』(1905年)の口絵ですね。27.8×22.1センチという小さな画面の口絵が発するエナジー、ムーブマン、エロティシズム――みんな片仮名になっちゃいましたが、英朋の才能に舌を捲かない人はいないでしょう。しかも「蚊帳の前の幽霊」よりもさらに若く、25歳の作品なんです。
舞台は石川県にあるという芙蓉潟――そこを竜巻が襲い、極悪非道なる慈善家・巨山おおやま五太夫の妻である美樹の乗った船が、水柱に雲をまぜた浪に捲かれて転覆し、みな真っ暗な湖に投げ出されたシーンです。それは竪川昇という憲兵少尉によって語られていますが、彼は1町も離れた別の船に乗っていたというのですから、想像をまじえた伝聞なのでしょう。
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