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2025年3月14日金曜日

三井記念美術館「円空仏」2

飛騨の山林と樹木は、奈良時代から伝えられる「飛騨の匠」の伝統を今日まで継承し、周囲には白山をはじめ北アルプスの槍、穂高、 乗鞍岳など山岳が連なり聳えています。それらの神が「円空仏」として今日まで祀られてきたのです。

本展覧会は、「樹木と樹神」「削る行為と削り痕を残すこと」「山林修行者と精神性」をキーワードに、これまで日本の仏像の彫刻史では異端とされてきた「円空仏」を、平安時代以降の仏教儀礼に則った造像との見方から、新たな「円空仏」の姿としてご覧いただくものであります。

「円空仏」の、前衛的で現代彫刻にも通じる造形の魅力を存分に鑑賞していただくとともに、円空が樹木に樹神を観、魂を込めて彫刻した仏の姿をご覧いただくのに、岐阜の飛騨は最もふさわしい舞台といえます。

 

2025年3月13日木曜日

三井記念美術館「円空仏」1

三井記念美術館「魂を込めた円空仏――飛騨・千光寺を中心にして――」<3月30日まで>

 まずは本展のカタログ巻頭にかかげられた、三井記念美術館館長・清水真澄さんによる「ごあいさつ」の一部を掲げて、円空仏のあらましと展覧会趣旨を知ることにしましょう。

江戸時代前期の山林修行僧円空は、生涯愛知、岐阜を中心に関東、北陸、さらに北海道までを巡錫し、各地に木彫の神仏像いわゆる「円空仏」を多数遣し、その数は現在五千体を超すともいわれています。 円空は、材となる「樹木」に神仏の姿を観想し、魂を込めてその姿を彫刻しました。

 それは現在も飛騨・千光寺にのこる、生木に直接鉈を下ろした像高二メートルを越す金剛力士立像で明らかにされ、日本の彫刻史では平安時代の樹木信仰すなわち「立木仏たちきぶつ」に源を求めることができます。「立木仏」の木に樹神が宿る思想は、樹木を形成する森林、その土地、周囲の山岳の神にも及びます。 

2025年3月12日水曜日

葉室麟『古都再見』3

 

「心はすでに朽ちたり」は、これまた僕の大好きな中唐の詩人・李賀をモチーフにした一文ですが、葉室さんが一度だけ髪を染めた経験から始めて、かの「長安に男児あり 二十にして心はすでに朽ちたり」へもっていくところが愉快です。春にちなんで――といってもいかにも李賀らしい陰鬱なる春ですが、「出城 権璩 楊敬之に寄す」をまたまた戯訳で……。

草 温かく 雲 暗く この世いずこも春爛漫

皇居の花が頬ほおをなで 旅立つ人を見送るよ 

漢の高祖の剣のごと 雄飛を誓った野心家が

なんてぇざまだ帰郷する 車に病身 横たえて……

葉室さんのデビュー作『乾山晩愁』は琳派ファンとして以前読んだことがありますが、そのうち直木賞受賞作『蜩ひぐらしノ記』も拝読することにしましょう。


2025年3月11日火曜日

葉室麟『古都再見』2

「ひとり酔い」はイノダコーヒ本店近くにある、ひどい目にあったバーに対する悪口ですが、真意はこのバーを著書で持ち上げていた、大先輩作家に対する恨みにあったんじゃないかな? 丸谷才一がある寿司屋を通して小林秀雄に対するマイナス感情を吐露したように……。一方「ウオッカバーにて」は、先斗町にあるというこの店へのオマージュですが、葉室さんが60代半ばでお亡くなりになったのは、やはり飲み過ぎだったのでしょう。

「薬子」は我が国悪女のトップバッターにあがる藤原薬子と、クレオパトラの「誇り高さ」という共通項を摘出してうならせます。このあいだ東京国立博物館の「大覚寺」展を紹介したとき、チョッと薬子のことも気になったので、とくに興味を引かれたのかもしれません。

 

2025年3月10日月曜日

葉室麟『古都再見』1


 葉室麟『古都再見』(新潮社 2017年)

 前回、渡部英喜さんの『漢詩花ごよみ』から春草を詠んだ絶唱を連載したとき、後花園天皇の七言絶句を引用し、葉室麟さんの見立てもアップしました。ついでにというのも失礼ながら、『古都再見』を通読し終わったところです。通読したというのは、もちろんとてもおもしろかったからです。

随想というべき文章だと思いますが、内容がとても濃いんです。10年ほど前『週刊新潮』に連載したものを集めた随想集のようですが、よくこれだけの文章を毎週お書きになれるものだと感を深くしました。

僕の大好きな与謝蕪村を取り上げては、蕪村――つまり荒れ果てた村という号に、天明大飢饉の予兆を読み取るところが葉室蕪村のポイントです。


2025年3月9日日曜日

『漢詩花ごよみ』春9

 

款冬花(蕗の薹ふきのとう)――中唐・張籍「賈島に逢う」

遊楽原の青龍寺 たまたま見つけたフキノトウ

  寺 出て漢詩を口ずさみ 歩めば沈む夕日かげ

  都大路を一面に 白く染めたり名残り雪

  馬蹄ばていパカパカここを去り どっかの飲み屋に繰り込もう

張籍は僕の大好きな「秋風」の作者、文章を練る意味の「推敲」は、賈島と韓愈の故事に出る言葉です。張籍は早春まだ冷たい土を破って芽を出すフキノトウに、賈島を例えているようなので、起句をもう少し意訳すれば、「賈島に出会った青龍寺 その人まるでフキノトウ」となるでしょう。「款冬」はフキ、「款冬花」がフキノトウだそうです。結句「誰家」は勝手に「どっかの飲み屋」としてみましたが……(笑) 


2025年3月8日土曜日

『漢詩花ごよみ』春8

 

僕が生業なりわいとしている美術などという「文化」にも、こういう影の一面があるのでしょう。いま人気を集めるNHK大河ドラマ「べらぼう」の吉原文化にも……。

後花園天皇が詠まれたワラビも、やはり伯夷・叔斉兄弟の故事にまつわるワラビです。これは和漢文化の光――妙なる交響を語っています。時空を越えて二人の人間が、ワラビという珍しくもない草にまったく同じイメージを抱いている――これこそ文化です。何と素晴らしいことでしょうか。

後花園天皇「無題」

  争い採っても採れるのは ただワラビだけ飢餓の民

  どこもかまどの火は消えて 竹の戸さえも鎖とざされる

  詩情の興る春二月 吟じたくなる季節だが

  都の桃や青柳あおやぎが 美を誇るのは誰がため?


東博「江戸のベストアングル」はおススメの広重リバイバル第一弾展です!! 人気の北斎何するものぞ!! あなたは広重派? それとも北斎派?

東京国立博物館「内山晋コレクション受贈記念『歌川広重 江戸のベストアングル』」<12月20日まで> 歌川広重――やはり 江戸時代風景版画を代表する双璧 ですね!! もちろんライバルは葛飾北斎 です。いまは北斎人気の方が上回っているかもしれませんが、本展を発火点として広重リバイバル...