今回僕は、髙木さんのギャラリートークが終わり、皆さんが3階の併設展示「茶の湯の美」へ移動したあとも、一人残ってこの蓋物を静かにながめ、改めて感を深くしていました。するとどこからか、「高砂やこの浦舟に帆をあげて……」という謡曲「高砂」の有名な上歌あげうたの一節が聞こえてくるような気がしたんです。
そうだ、このモチーフは世阿弥の傑作「高砂」かもしれない――これまで松と波を描いた蓋物とばかり見なしてきましたが、やはりお能や謡曲も導入されているにちがいないと思われてきたのです。いや、導入というと言葉が強すぎます。イメージのかすかな反映といえば、もう少し作品に寄り添うことになるでしょう。
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