2021年9月16日木曜日

山根登・生の証8

もちろんその男も完全に出来上がっていましたが、まったく乱れるところがありません。しかし実演が佳境に入るころ、奥からシラフの男が出てくると、大声をあげて一喝、ストップさせてしまったんです。湖南語なのか、まったく分かりませんでしたし、事情もよく飲み込めませんでしたが、おそらく店主だったのでしょう。

 というわけで、長沙は馬王堆とともに、拉麺の妙技でも忘れることができない街なんです()  しかし拉麺はともかく、登さんの絵を見て懐かしさを感じるのは、僕の長沙体験のためばかりではありません。

そのサウダーデの起因が、見る人をしみじみとした情感に誘う魂魄のようなもの、言霊にならっていえば画面に揺曳する「形霊」や「色霊」にあることは、すでにアップしたとおりです。しかし今回「長沙の兵舎」を拝見して、僕は「影霊」という言葉を新たに捧げたいなぁと思ったのでした。

 

 

0 件のコメント:

コメントを投稿

渡辺浩『日本思想史と現在』8

  渡辺浩さんの『日本思想史と現在』というタイトルはチョッと取つきにくいかもしれませんが、読み始めればそんなことはありません。先にあげた「国号考」の目から鱗、「 John Mountpaddy 先生はどこに」のユーモア、丸山真男先生のギョッとするような言葉「学問は野暮なものです」...