2020年9月30日水曜日

五木寛之『大河の一滴』6


『広辞苑』によると、「俗情」の第一義は「世俗のありさま。また、世俗の人情」です。俗情には「名利を念とする情」とか、若いころ悩んだ「情欲」の意味もありますが、もちろん大西巨人のいう「俗情」は第一義、つまり市井の人々の自然な心の動きです。「結託」がいかにも巨人的表現だとしても、世俗の人情にやさしく寄り添わずしてベストセラーにならないことは、巨人の指摘するとおりでしょう。

ところで人々は、みずからの考え方やものの見方が正しいことを証明し、納得するために、このような書を求めることがほとんどではないでしょうか。まったく自分の考えと反対のことが書いてあれば、大枚をはたいて買うはずもありません。

高度成長時代が終焉し、バブルがはじけて10年近くが経過し、何となく多くの人々が感じ始めていた疑い――やはり我々はどこかで間違っていたのではないかという気持ちと、共鳴を起こしたからこそ、ベストセラーになったのでしょう。その意味では、読者が五木寛之さんに寄り添ったのです。 

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