これを「僕の一点」に選んだのは、かつて鎌倉大谷記念美術館で拝見、強く心に残っているからです。ホテルニューオータニ会長であった大谷米一さんの絵画コレクションは、鎌倉の私邸を改装した美術館で公開されていました。横須賀線に乗れば逗子からはひと駅、何度かお邪魔しましたが、そのたびに僕をいやしてくれたのは、そのデュフィ・コレクションでした。
この美術館は、朽木ゆり子さんいうところの邸宅美術館――日本では数少ないすばらしい邸宅美術館でした。もちろん大谷家の邸宅ですからとても立派でしたが、美術館としてはこじんまりしています。そこにデュフィの作品が、最高の居場所を見っけた!!という風情で並んでいるんです。「赤いヴァイオリン」のクオリティは言うまでもありませんが、それほど大きくない号数が、その室内空間にピッタリでした。
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