その絵画もじつに素晴らしいのですが、多くテンペラ画である点がおもしろく感じられました。フォルチュニは油彩画よりも、テンペラの方を好んだのです。油彩画と比べると、テンペラは乾きが速いために、色の面を平塗りにすることや、ぼかしテクニックを用いることが比較的むずかしく、おのずと線的描写が多くなるといわれています。これは日本画の性格とちょっと似ています。
フォルチュニのテンペラ作品を見ると、超絶技巧を身につけていたと思われる彼は、このようなテンペラの弱点をみごとに克服していることが分かります。しかし、フォルチュニが日本画に近いテンペラを油絵より好んだという事実――それを僕はとてもおもしろく思いながら、濃密なる会場をあとにしたのでした。
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