2019年8月1日木曜日

松浦武四郎12


経世済民を旨とすべき政治的立場から、これを敗北と見なした吉澤忠先生は、かつて「田能村竹田の敗北」という名論文を『國華』に寄稿された。しかし一人の人間の生き方としてみれば、結局竹田は正しかったのだと考える私は、それに答えるアンサー・エッセーのような形で、先の論文を書いた。その竹田と同じ意味において、松浦武四郎も正しい選択を行なったのであり、人生における真の勝利者だったのではないだろうか。

企画展を開くにあたり、何冊か武四郎関係の本を読んだ。吉田武三氏の『松浦武四郎』(人物叢書)は、いまも定本の地位を失っていない。今回、お嬢さんの吉田安希さんと知り合えて、実にうれしかった。花崎皋平氏の『静かな大地 松浦武四郎とアイヌ民族』(岩波現代文庫)は、著者みずからの行き方と武四郎を重ね合わせて、読む人に猛省を促がし沈思黙考へと誘う。

0 件のコメント:

コメントを投稿

渡辺浩『日本思想史と現在』12

  そのとき『君たちはどう生きるか』の対抗馬 (!?) として挙げたのは、色川武大の『うらおもて人生録』(新潮文庫)でした。京都美術工芸大学にいたとき、『京都新聞』から求められて、就職試験に臨む受験生にエールを送るべくエッセーを寄稿したのですが、本書から「九勝六敗を狙え」を引用し...