2019年7月17日水曜日

山種美術館「速水御舟」8


*速水御舟「絹と紙」(『美術街』 昭和102月号)

絵を描く場合に絹と紙とどちらをより多く使用するか、どちらを好むかと言う事はよく訊かれることだが、絹には絹のよさがあり、紙には紙のよさがあって、それをはっきり言う事は困難である。何れをとるかは絵を描く場合の心持にあると思う。ただ自分としてはこういう事は言える。即ち大作をする時は絹の方がいいと思い、小さな作品を作る時は紙の方がいいと思う。然しこれは勿論極く概念的な話である。

絹は紙に比較してどうしても目が荒い。だから非常にデリケートな仕事は仕悪いのだ。そこから行くと紙はずっと目がつまっていてどんな細かい仕事でも出来る。味も絹よりは紙の方にデリケートなものが表現される。そんな理由から言っても、紙の上の表現はデリケート過ぎて自分としては大作に適しないような気がする。

0 件のコメント:

コメントを投稿

皇居三の丸尚蔵館「近世の御所を飾った品々」6

 友松は晩年、桂宮家を創始した智仁 ともひと 親王のもとにしばしば出入りし、押絵の注文などを受けていたことが、記録から明らかになっているからです。畏友・河合正朝さんの『友松・等顔』<日本美術絵画全集 11 >(集英社  1978 年)によると、桂宮淑子 すみこ 関係の記録にある「...