2019年6月19日水曜日

追悼 田辺聖子さん5


『姥ざかり花の旅笠』を読んで感を深くしていた僕は、ぜひ聖子さんにもお書きいただいたいなぁと思わずにいられませんでした。しかし、僕はもとより、天羽さんと接点がなかったこともあり、そのままになってしまいました。

もう一人、ぜひご寄稿いただきたいと思ったのは白川静先生でした。白川学に対して批判があることは知っていましたが、漢字は精神的所産であるという先生のお考えには、深く共鳴するところがあったからです。何よりも、『漢字 生い立ちとその背景』(岩波新書)がこの上なくおもしろいからです。

先生にはお手紙を書いた上でお電話を差し上げました。これから書かなくてはいけない本が10冊ほどあるとのことでしたが、そのあとで結構ですからと無理を言って、「漢字と美術」といった内容で如何でしょうかとお願いしました。しかし間もなく、先生は幽明界を異にされてしまいました。

聖子さんにもダメモトでお手紙を差し上げればよかったなぁと、ご逝去の報に接し、昨日のことのように思い出されたことでした。


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