2019年5月28日火曜日

町田市立博物館最終展4


鳥獣をかたどる真珠の象嵌がほどこされたテーブル――わが国やフランスの高級家具職人なら、その技を盗むために何ものをもなげうつだろう。金色の魚や亀が迫真的に浮き彫りされている小箪笥。かつて中国が生み出したいかなる品よりも、五十倍もの創意と技巧と機知にあふれた、象牙や骨や木でできたすばらしい小逸品。あまりにデリケートなので触るのがこわいような磁器。要するに、お菓子屋に入った子どもでさえも、その朝の出島会所でのわれわれほどには、どれにしようかと迷って、菓子から菓子へと走り回りはしなかっただろう。

 「僕の一点」は「緑釉鎬文鉢[りょくゆうしのぎもんはち]」――キャプションによると、14世紀、ベトナムの焼き物だそうです。「中村三四郎氏寄贈」とありましたが、ほかにもこの方の素晴らしい寄贈作品がたくさんありましたから、よほど眼のこえた陶磁コレクターだったのでしょう。

0 件のコメント:

コメントを投稿

追悼シンポジウム「高階秀爾館長と大原美術館」4

   僕は10月17日が、 杉田玄白とともに『解体新書』を翻訳出版した 蘭化前野良沢の 祥月命日でもあることからスピーチを始めました。もちろん高階先生が『解体新書』を「江戸のなかの近代」として 最重要視され 、出版220周年の1994年には、挿絵を担当した小田野直武の出身地である...