2019年3月4日月曜日

追悼ドナルド・キーン先生 4


ふたたびキーン先生にお会いしたのは、2004年のことでした。僕は美術雑誌『國華』の編集委員をつとめていますが、その國華社が中心となって、毎年すぐれた美術史の研究業績に対し國華賞を差し上げています。

 2004年度16回國華賞には、玉蟲敏子さんの大著『都市のなかの絵――酒井抱一の絵事とその遺響――』と、石松日奈子さんの論文「雲崗中期石窟新論――沙門曇曜の失脚と胡服供養者の出現――」が選ばれましたが、その贈呈式に際し、キーン先生には「渡辺崋山の肖像画について」という特別講演をしていただいたのです。すでに追悼の辞をアップしたことがある國華事務局長・天羽直之さんが、キーン先生と親しかったことから生まれた企画でした。

この示唆に富む講演は、翌年の『國華』1321号に活字化されましたが、その2年後、キーン先生はこれを含めて『渡辺崋山』と題するモノグラフを新潮社から出版されました。最初に特別講演をお願いした際、ある古美術商さんのもとへ先生を案内し、与謝蕪村の傑作「峨嵋露頂図巻」を見ていただいたことも忘れることができません。

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